大判例

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大阪地方裁判所 昭和52年(ワ)4728号 判決

一 原告が昭和五一年三月一六日以降本件実用新案の権利者であること、およびその時期は暫らくおき少くとも被告がかつて業としてイ号製品を製造、販売していたことはいずれも当事者間に争いがない(ただし、右争いない後段の事実によると、本件においてイ号製品として特定されるべきものは別紙(〔編註〕省略)イ号図面のうち、番号1ないし5で図示されている取付金具だけであると解するのが正確である。)。

二 原告は、右イ号製品は本件実用新案の技術的範囲に属する旨主張するので検討する。

(一) まず、本件実用新案の登録請求の範囲を分説すると原告主張のとおり三個の構成要件(請求原因(二)項1の(1)ないし(3)の要件)に分説されうることについては当事者間に争いがない。

(二) 次に、イ号製品の構成の概略を本件実用新案の構成要件に照らし分説すると次のようになると解される。

すなわち、それは別紙イ号図面(ことにその左隅部分の番号1ないし5が付されている図)に示されているとおり、自動車ドアー開閉装置の取付金具であつて、

(1) 金具の主板1の一端に溝部4を形成し、

(2) 該主板1の中間部に軸受部2を形成し、これを軸装ビス3で主板に固着し、

(3) 主板1の他端に懸合子部分5を形成してなつている。

(三) そこで、右イ号製品の構成を前記本件考案の構成要件と対比するに、(イ)イ号製品が自動車ドアー開閉装置の取付金具であつて、それが本件考案にいう自動車ドアー開閉摺動横杆のブラケツトにほかならないこと(要件の柱書部分)、(ロ)その主板の一端に溝部を形成していること(要件(1)の一部分)、(ハ)同じく主板に軸受部を設けていること(要件(2)の一部分)、(ニ)同じく主板の他端に懸合子部分を設けていること(要件(3)の部分)等の点において部分的には本件考案の構成要件を充足している点のあることは原告主張のとおりである。

しかし、イ号製品の構成が本件考案の構成要件全部を充足しているかのようにいう原告の主張は到底これを肯認することができない。たとえば、いまイ号製品の(1)の構成を本件考案の(1)の構成要件に対比してみるに、前示のとおり、イ号製品において主板1の一端に溝部4を形成している構成は本件考案にいう「………主版1………に溝部5を形成」するという要件を充足していることは認められるとしても、本件考案においては右のように単に主版1の一端に溝部を形成することだけを要件としているのではなく、溝部は「弾性主版1の傾斜部2の上端の直立部3の折曲げ平担部4に」形成されることが必要である。しかるところ、イ号製品の主板の構成は少くとも右にいう「傾斜部」を欠くものであること明らかである。

しかして、成立に争いない甲二号証によると、本件考案が主版に傾斜部を設ける構成をとつたのは、本件考案にかかるブラケツトの構造が次のような目的に奉仕するものとして考案されたことに由来するからにほかならないこと、すなわち、本件考案にかかるブラケツトはその主版の一端(上端)の平担部に設けた溝部を自動車前部座席の前寄り部分下部ボルトに挿入するとともに、他方においてはその他端(下端)の懸合子を該座席の後寄り部分直下の車床に近い支持板下端に懸合せしめ、もつてブラケツトを自動車に装着することを目的としたものであつて、装着されたブラケツトを側面からみた場合いわば斜めに取り付けることが予定されているものとして考案されたものであることが認められる。したがつて、傾斜部の構成はいうまでもなく本件考案に欠くことのできないものである。これに対し、イ号製品の主板が傾斜部を設けていないのは、それが自動車前部座席の下部の狭い空間を利用していわば車床部に平行になるようにして装着することを目的としたものであるからにほかならないことが、その構成自体および被告の弁論の全趣旨に照らして明白である。

このようにみてくると、イ号製品は、爾余の構成の詳細について検討するまでもなく、その主板の構成上「傾斜部」を欠くことの一点からしても本件構成要件を充足するものでないものといわねばならない。

三 してみると、被告のイ号製品製造販売行為は何ら本件実用新案権を侵害するものではないから、原告の本訴請求は爾余の判断をなすまでもなくすべて失当である。

よつて、原告の請求を棄却する。

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